ご挨拶
第35回日本脳腫瘍病理学会
会長 植木 敬介
獨協医科大学脳神経外科・腫瘍センター 教授
この度、副会長の佐々木惇教授(埼玉医科大学病理学)と共に第35回日本脳腫瘍病理学会を開催させていただくことになりました。会期は2017 年5月19日(金)・20日(土)、会場は宇都宮市の中心にあります栃木県総合文化センターです。大変光栄なことと感じると同時に、重責も感じております。会員の皆様にとって有意義な会になるよう、全力を尽くしたいと思います。
現在、脳腫瘍の病理とそれに基づく臨床は大きな転換点を迎えています。
高性能の顕微鏡を用いることでTheodor Schwannが確立した細胞組織学を基に1850年代にRudolph Virchowによって確立された細胞病理学と病理組織学が、およそ150年間、病理学の根幹であり続けています。脳腫瘍においては1929年のBaily & Cushing が提唱した組織形態とそれに基づく仮想の腫瘍発生母体による分類がほぼ100年近く基本であり続けてきました。しかし1953年のWatson-CrickのDNA二重らせん構造決定以後、急速分子生物学が進み、それに基づいて、分子病理学が発展し、ついに2016年のWHO分類のupdateでは、初めて分子情報が脳腫瘍分類の定義に組み入れられ、いわば公的に分子病理学が脳腫瘍の分類と診断に導入されたことになります。今回の学会は、これを受けて、脳腫瘍の診断と治療と研究に関わる我々がどのような方向に歩み出さなければならないかを考える非常に重要な会になると考えています。
まず、改訂を主導されたMGH/Harvard Medical SchoolのDavid N. Louis 先生をお迎えして、これからの脳腫瘍病理学について白熱した議論ができるようにしたいと考えています。
また、分子病理学が腫瘍の発生、性格、行動にどのような洞察を与えてくれるのか、テロメアと細胞の老化と不死化に関する研究の世界的権威である京都大学の石川冬木教授のお話を伺いながら、議論を深めたいと存じます。会員の皆様方から多くのご演題をいただけるようお願い申し上げます。
従来から行っております脳腫瘍病理セミナーも同じ会場で行います。十分な席数を確保してございますので、脳神経外科専門医前の方だけでなく、新たな脳腫瘍病理学のupdateを目指す先生方にも多くご参加していただければ幸いです。
宇都宮は、この時期新緑が鮮やかな日光まで1時間弱です。学会終了後は是非この世界遺産にお立ち寄りください。
多くの皆様のご参加をお待ち申し上げます。